ヘルメットは、フルフェイスとオープンフェイスのどちらが安全か。
事故の統計から調べてみました。
アゴの怪我は5%
USCの調査によると、事故の際にアゴ部分をぶつけた割合は5.3%です。
上の右側の図を見ると、アゴの部分8と表示されたエリアが3.5%、7と表示された下アゴの部分が1.8%。合計5.3% がアゴ部分の怪我です。
453人中、アゴ部分をぶつけた人は、24人(5.3%)となっています。
ほほまで覆うタイプのオープンフェイスがカバーしている下アゴの奥歯あたり(9の7、2の7)を怪我した人が2名いるので、フルフェースでないと防げない部分の怪我をした人は22人(4.9%)になります。
アゴガードの安全性
あごガードの固定力や耐久性などの基準はJISにはありません。
SNELLやECE-R022には、あごガードも衝撃吸収性能と性能試験が定められています。
アゴガードがあっても、システムヘルメットは要注意だという記述が、経済産業省の調査にあります。
「フリップアップヘルメットのあごガードを跳ね上げたままで走行すると、跳ね上げたあごガードが意図せず下がってきて、中途半端な位置で止まってしまった場合には、視界を阻害するおそれがある。」ということです。
首の怪我が多いのはフルフェイス
南カリフォルニア大学の調査「MOTORCYCLE ACCIDENT CAUSE FACTORS AND IDENTIFICATION OF COUNTERMEASURESVOLUME I: TECHNICAL REPORT」によると、事故で怪我をした際にに首を怪我した割合は
- フルフェース着用者 13.3%
- 半ヘル着用者 12.5%
- オープンフェイス着用者 4%
となっており、オープンフェイスのほうが首を怪我する率が低いという結果になっています。
下記にの表に調査結果がまとめられています。
首を怪我した割合は 9.8% (900人中88人)です。
ヘルメット着用者に限定すると、首に怪我をした割合は 7.7% (364人中28人)です。900人のうちヘルメット着用者は364人(ヘルメット装着率40%)です。
首に怪我した割合を着用していたヘルメット別にみると
- オープンフェイス着用者197人、首に怪我8人、 4%
- フルフェース着用者113人、首に怪我15人、13.3%
- 半ヘル着用者32人、首に怪我4人、12.5%
- ノーヘル536人、首に怪我60人、11.2%
となっています。
ノーヘルのほうが半ヘルやフルフェースより首に怪我しにくいという結果です。
たぶん、着用するヘルメットによって、速度や走り方、バイクの排気量などの傾向が違うからだと思われます。
例えば、フルフェースの人はノーヘルの人より早い速度で走っているとか、ノーヘルの人が乗っているバイクの平均的排気量はフルフェース被っている人のバイクの排気量より小さいとかいった違いがあるのではないでしょうか。
フルフェース着用してリッターバイクでスピード出すより、ノーヘルで原付に乗ってトコトコ走ったほうが安全なのかもしれません。
オープンフェイスだと首の怪我が多いタイ
タイの交通事故調査「MOTORCYCLE ACCIDENT CAUSATION AND
IDENTIFICATION OF COUNTERMEASURES IN THAILAND VOLUME II: UPCOUNTRY STUDY」は、359件の自動二輪の死傷者を調査した結果を掲載しています。
それによると、オープンフェイスのヘルメットを着用していた36人中3人、8% が首の怪我をしています。
首に怪我をした人の全体平均は2.8%ですので、平均の約3倍です。
ヘルメットの種類と、首の怪我の割合
Neck injury severity and type of helmet.
TOTAL | None | Minor | Moderate | Severe | Serious | Critical | Fatal | |
No helmet | 280 | 272 | 5 | 1 | 1 | |||
Not MC helmet |
0 | 0 | ||||||
Half/Police- type helmet |
41 | 41 | ||||||
Open-face helmet |
36 | 33 | 2 | 1 | ||||
Full-face helmet |
2 | 2 | ||||||
Total | 359 |
首に怪我をした人の数だけみると
- ヘルメット着用していないで首に怪我した人が7人
- オープンフェイスヘルメット着用者で首に怪我した人が3人
- フルフェイスはゼロ
となります。首に怪我した人はゼロのフルフェースが安全なように見えます。
しかし、全359件の死傷者のうち、フルフェース着用者はたった2人です。
オープンフェイスヘルメット着用者33人、半ヘル着用者は42人、バイク用でないヘルメットないし無帽の日282人という結果。
タイは暑い国なのでヘルメットの装着率は35%yと低く、フルフェイス着用はさらに少ないようです。
暑い国では、フルフェイス着用者が少なすぎて、意味のある統計になりません。
下の表は同じ調査で、首の怪我に限定せず、重症者と軽傷者の割合を表にしたものです。
ヘルメットの種類と、軽傷、致命傷の割合
Type of helmet in fatal and non-fatal accidents
Helmet type | Non-fatal accident | Fatal accidents | ||
件数 | 割合 | 件数 | 割合 | |
No helmet | 271 | 78% | 9 | 75% |
Open-face helmet | 30 | 9% | 3 | 25% |
Half/Police-type helmet | 42 | 12% | 0 | 0% |
Not MC helmet | 2 | 1% | 0 | 0% |
Full-face helmet | 2 | 1% | 0 | 0% |
Total | 347 | 100% | 12 | 100% |
ノーヘルが一番危険という結果になっています。
アメリカと比べると、排気量の小さいバイクが圧倒的に多いことや、小排気量バイクにノーヘルで二人以上乗っていることが多いことなどが影響しているのかもしれません。