バイク用ブーツのCE規格

バイク用ブーツのCE規格は、EN 13634です。

CE規格EN13634が定めている基準は、以下のような内容です。

  1. 固さ  :倒れたバイクに足が挟まれても、靴が簡単に潰れないか
  2. 耐衝撃性: 足に受けた衝撃を、ブーツがどの程度緩和するか
  3. 耐摩耗性: 転倒時に路面で削れてしまうのを防ぐ耐摩耗性
  4. 耐久性: 通常の使用状態で簡単にすり減って穴ができない耐久性
    • ドライでの耐久性
    • 濡れた状態での耐久性
  5. 防刃性:尖った金属などが飛んできても、ある程度足を保護するか
  6. 丈夫さ :衝撃で靴がバラバラになってしまわないか
    • つま先が何かに衝突しても、靴底の簡単に剥がれないか
    • 縫い目・ツナギ目から簡単に分解しまわないか
    • 素材が簡単に裂けてしまわないか
  7. 大きさ :靴が保護する部分の広さ
    • 足首をカバーできる靴の深さがあるか
    • すね当ての大きさ、くるぶし保護部の大きさが規定以上か
    • シャーリングが大きすぎないか(脆弱なので小さい方が良い)
  8. 靴底の質
    • 靴底の厚さが規定値以上か
    • 靴底靴底の溝が、スリップ防止効果が期待できる深さがあるか。

といった基準を満たしたブーツが、CE規格のバイク用ブーツとして、CE認定マークを表示することができます。

それぞれの基準は、具体的には以下のように定められています。

固さ : ブーツの固さ基準

倒れたバイクに足が挟まれても、ブーツが簡単に潰れないかを、ブーツを横に倒して、押し潰して試験ます。

transverse_rigidity_testバイクに足を挟まれた時を想定して、ブーツの固さの基準を決めています。

ブーツを横にして上から押して、押しつぶすの必要な力の基準値を定めています。

  • Level-1 1.0 kN 以上
  • Level-2  1.5 kN 以上

1kN は約100キロ、1.5kNは約150㎏です。

最低限の保護性能を満たすブーツをLevel-1、より高い保護性能があるブーツをLevel-2として認証しています。

耐衝撃性

  衝撃
J
足に伝わる衝撃
kN
くるぶし 10 5
向こうずね 10 5

10Jのエネルギーの衝撃を加えて、足に加わる力が5kN以下

耐摩耗性

耐摩耗性が基準値以上であることを、EN 13595-2の基準で試験することが定められています。

EN 13595-2の耐摩耗性基準

秒速8メートル(時速28.8km)で回っている研磨ベルトでブーツの素材(革など)を削って、無くなってしまうまでの時間を計測します。
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試験方法

ブーツに使う革などの素材(検体)を切り取って、下図の機具に巻きつけます。detail-of-the-clamping-system-for-samples-on-the-sample-holder検体は、0.8㎜~1㎜のセーム皮の上に2枚のデニムを重ねた上にクリップで固定されます。

検体を巻きつけたこの機具を、研磨ベルトの上に、5㎝の高さから、49Nの力で押し付け、29kPaの圧力をかけます。

この機具の研磨ベルトとの接触面は直径5㎝の円形です。この円形の面が研磨ベルト削られます。

下の写真は、素材を機具に巻きつけて、研磨ベルトで削る耐摩耗性試験をしている様子です。

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研磨ベルトは、粒度OP60のアルミナ砥粒を使うことになっています。上の写真の茶色い部分が研磨ベルトです。

検体が削られて無くなるまで、時間を、10msec以下の精度で計測します。

計測のために、0.14㎜の銅線を検体の内側と外側に貼り、外側の銅線が断線してから内側の銅線が断線するまでの時間は計測します。

耐摩耗性の基準値

en-13634_impact-zones磨滅時間の基準は、ブーツの部位ごとに定めれています。

動きやすさのために柔軟になっているシャーリングなどがあるArea-A と柔軟性が求められないArea-Bの2区分があります。

  Level 1 Level 2
Area A に使う素材 1.5 秒 2.5 秒
Area B に使う素材 5 秒 12 秒

時速28.8㎞で回転する研磨ベルトで削って5秒かかるということは、路面を滑っていったとすると約40mです。

時速28.8kmで路面を滑っていっても、Level-1なら40m、Level-2なら100mは足がむき出しになることはありません。

耐久性

ブーツに使う革などの素材が、日常的な使用で簡単にすり減ってしまわないか、EN ISO 20344の6.12に基づいた耐久性テストをします。

試験方法

直径12.5cmの円形の台にに厚さ 3 ± 0.5mmフェルトを敷いてその上をブーツに使う革などの素材(検体)でカバーします。

検体で覆われた12.5cmの台を、直径28.65 ± 0.25mmで795 ± 7 g の重りでこすります。こするパターンは、6cm角のリサージュパターンで毎分47.5 ± 5回こすります。iso-20344%e3%81%ae%e6%91%a9%e8%80%97%e3%83%86%e3%82%b9%e3%83%88

耐久性基準値

  • 通常の状態で、2万5600サイクル擦っても穴が開かない
  • 濡れた状態で、1万2800 擦っても穴が開かない

濡れた状態とは、一晩水に漬けるか、水の中に浸してかき混ぜるか、高圧水をかけるかの、どれかの方法で素材に水を含ませた状態です。

防刃性 Impact cut resistance

EN 13595-4(Protective clothing for professional motorcycle riders )に基づきアッパー(靴の底を除いた上の部分)の厚さの試験します。

110 g ± 2 g のナイフを20㎝ と 40 cmの高さから刃を下にして落として、貫通する深さをが、以下の規格値以下であることが規格です。

耐摩耗性基準をと同様に Area-AとArea-Bの2つに区分し規定しています。

エリア Level 1 Level 2
Area-A ナイフ衝突速度 2.0 m/s,
貫通 25 mm 以下
ナイフ衝突速度 2,.0 m/s,
貫通 25 mm 以下
Area-B ナイフ衝突速度 2.8m/s,
貫通 25 mm 以下
ナイフ衝突速度 2.8 m/s,
貫通 15 mm 以下

丈夫さ

素材のつなぎ目が、4.0 N/mmの力でも分離しない強度であること規定されています。

靴底の厚さは4㎜以上でという規定もあります。

大きさ

 7か所のサイズ基準があります。en_13634_2010%e3%81%ae%e8%a6%8f%e5%ae%9a%e3%81%99%e3%82%8b%e3%82%b5%e3%82%a4%e3%82%ba

  1. スネ当ての最低長
  2. スネ当ての最低幅(下端)
  3. スネ当ての最低幅(上端)
  4. すね当て上部の角のR
  5. くるぶし保護部の最小サイズ
  6. シャーリングの最大長
  7. 靴の高さ(靴のサイズに応じて規定)
    23㎝なら162㎜以上、
    25.5-26.0cmの靴なら178㎜以上など

靴底の質

足を歩道にぶつける事故が多いので、ぶつかっても剥がれないような靴底の強度が規定されています。

靴底の前半分側の縫い目が、つま先側(前)に向かっていないこと

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その他

衝撃試験、加圧試験などの事故からの保護はもちろん、人間の肌あれ防止のためになどの様々な保護基準が含まれています。

アッパー(靴の底を除いた上の部分)の素材

  • 革に含まれる酸・アルカリがPH3.2以上であること
  • 革の製造過程で残留した6価クロム残留量が3,0 mg/kg以下であること
  • 濡れても色落ちしない染料を使っていること
  • インソール素材は70 mg/cm2以上の吸水性があること

 

イギリスではバイクで病院に運ばれる人の19%が下肢の怪我だそうです。

そのため、踵と足の保護は重要だとされています。

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