ヘルメットの安全基準には、JIS規格、SNELL、DOT、MFJ規格、ECE22-05規格、PSCマーク、SG 、BSIなど様々な規格、基準、認定制度があります。
保護範囲は、後頭部の下の首に近い部分までの安全性を求めているSNELLが厳しく、.側頭部は耳の下側までカバーしているJISのほうがSNELLより厳しいなどの差があり、どれが一番安全か決めることができません。
JIS規格、SNELL、DOT、MFJ規格ECE22-05規格、PSCマーク、SGが、どんな基準なのかを、ざっと書き出してみました。
JIS規格
ヘルメットのJIS規格は、経済産業省が規定する乗車用ヘルメットの最新規定は、2015/10/20発行のJIST8133:2015です。一つ前がJIS T 8133:2007 です。
http://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrJISNumberNameSearchList?toGnrJISStandardDetailList
2種類、4形状のヘルメットを規定しています。
1種:125cc 以下用 形状は「ハーフ」と「スリークォーターズ」
2種:自動二輪車用 形状は「オープンフェース」と「フルフェース」
安全性能
以下の5つの性能を規定しています。
- 衝撃吸収性能
- 試験方法
ヘルメットに頭の重さ(60cmサイズで5.6㎏)の重りを入れ、合計8回落下させる。
- 1か所あたり2回
1回目は秒速7.0m
(時速25.2㎞、高さ 2.5 mからの落下相当)で衝突させる
2回目は秒速5.0m
(時速18㎞、高さ 1.28 mからの落下相当)で衝突させる - 4か所に対して合計8回
2回1セットの衝撃試験を、4か所行う。 - 平面と凸面にぶつける
4か所の内2か所は平面状アンビルに、2か所は半球状アンビルに衝突させる。
- 1か所あたり2回
- ピーク値の基準
頭に伝わる衝撃が最大(ピーク)で300G以下 - 継続時間の基準
150Gを超える衝撃が頭に加わるが時間が4ミリ秒以内
右のグラフ(Wayne State Tolerance Curve)の上側は脳に致命的な障害が生じるレベル
衝撃持続時間4msecの所の赤線をみると、130G以上で危険なレベル。4msecの間150G以上だと、生命に危険があるレベルギリギリ。
(1種は1.72mからの落下で150G超が6ミリ秒以内) - 試験実施の後,使用者に危険であるような破壊又は変形をしないこと
- 試験方法
- 耐貫通性能
先のとがった3㎏のストライカを2m(1種は1m)の高さから落下させてヘルメットに衝突させた時、ストライカの先端が頭に触れる深さまで突き刺さらない) - シールド強度
(直径3.7cmで重さ200gの鉄球を1mの高さから落として、シールドに衝突させた時、鉄球が貫通したり、シールドが2つに割れたりしない) - ストラップの強さ
ストラップに15㎏の重りをぶら下げた状態で10㎏の重りで衝撃を加えても、ストラップが3.5cm以上伸びないこと。衝撃を加えたは長さは元に戻り2.5cm以上長くなっていないこと。 - 脱げ落ちにくさ
ヘルメットの後ろを、斜め前上方に規定の力で引っ張っても脱げないこと。
保護範囲
ヘルメットで覆って保護する範囲も規定しています。
2種ヘルメットの保護範囲は、右図の緑の部分が保護範囲です。
1種ヘルメットは右図のACFから上の部分です。
衝撃試験を行う義務のある範囲は、1種、2種ともに緑の保護範囲の上部にある、黒の斜線の範囲だけです。
形状・形
形や外形についても規定しています。
形状規定の例
- 滑らかな形状であること
- 外側表面が滑らかなこと
- 外側に5㎜以上の突起が無いこと
- 外部突出物は滑らかで,かつ,流線形であること。
- 凸部や段差は,面取りなどをして、引っ掛かりにくい構造にすること
規定の視野を確保すること
- 左右105度で合計210度以上
- 上方向7度で下45度合計52度以上
- あごひもにチンカップが付いていないこと
- シールド開放角
(シールドが上に大きく開かない。右図で5度まで) - 外の音が聞こえること
SNELL規格
http://www.smf.org/standards/m/2015/M2015FinalFinal
5年ごとに規格が更新される。
SNELLの試験では、JIS基準より大きな衝撃を加えて、頭に伝わる衝撃を計測する。
大きな衝撃を加えるにもかかわらず、頭に伝わる衝撃の許容値は、SNELLが243Gから275G以下、JISが300Gであり、SNELLのほうが厳しい。
たたし、JISには、150Gを超える衝撃が時間が4ミリ秒以内」という規定もあるが、SNELL2015には継続時間の規定は無い。
SNELL M2015
- 外側の表面が滑らかであること。
- 外側に7㎜以上出っ張る部分は、衝突時に簡単に壊れること
- 接線方向の摩擦が少ない外側表面であること
- リベットが突出する場合2mm以上突出しないこと
- 内側の表面が滑らかであること
- 頭に傷害を与えるようなリベット等の固い突起がないこと
- 衝撃保護能力は、可能な限りヘルメット全体で均一とすること
- 左右105度で合計210度、上方向7度下30度合計37度
- ヘルメットに頭の重さ(60cmサイズで5.6㎏)に相当する重りを入れた状態で落下させて、1回目は秒速7.5m(高さ3.06メートルからの自由落下で秒速7.5m、時速27㎞になる)で衝突させ、2回目は秒速7.06mから5.02(時速18㎞、高さ2.56mから1.28mからの落下に相当)で衝突させた時の衝撃最大値が既定値を超えないこと
ヘルメットのサイズ 50 cm 52 cm 54 cm 57 cm 60 cm 62 cm 最大衝撃値 275 G 275 G 275 G 275 G 264 G 243 G - 3kgの先のとがったストライカーを秒速7.5mで衝突させても貫通しない帽体であること
- 保護範囲
保護範囲は、灰色の部分。
衝撃テストを行うのは、保護範囲のうち「TEST LINEより上部」に限定
ヘルメッ サイズ |
各部の長さ | ||||
a | b | c | d | e | |
50 cm | 39.0 mm | 128.6 mm | 26.1 mm | 46.8 mm | 52.2 mm |
52 cm | 40.6 mm | 133.8 mm | 27.2 mm | 48.4 mm | 54.3 mm |
54 cm | 42.2 mm | 139.0 mm | 28.2 mm | 50.0 mm | 56.4 mm |
57cm | 45.2 mm | 148.4 mm | 30.0 mm | 53.0 mm | 60.0 mm |
60 cm | 47.4 mm | 155.8 mm | 31.5 mm | 55.2 mm | 63.0 mm |
62 cm | 49.2 mm | 161.5 mm | 32.2 mm | 57.2 mm | 64.5 mm |
M2010
SNELL M2010認定ヘルメット一覧
http://www.smf.org/certlist/std_M2010
M2015
SNELL M2015認定ヘルメット一覧
http://www.smf.org/certlist/std_M2015
SG
「(財)製品安全協会」が安全性を認定した製品にSGマークが付けられる。
SGは民間の規格であり、SGマークが無くても法律違反にはならない。
SGマークの有あるから合法になることもない。
SGマークがある製品が欠陥品だと「(財)製品安全協会」が認定すると、欠陥による事故の際に最大1億円の賠償金が支払われる。
欠陥品だと認定されなければ、事故や怪我をしても、賠償金はゼロ。
125cc以下用と自動二輪車用の2種類があります。
PSCマーク
メーカーや販売会社が、自社で検査をして、経済産業省に所定の事項を届け出れば、PSCマーク(特定製品マーク)を表示できる。
第三者機関の審査不要の「自己認証マーク」。
消費者の生命又は身体に対して危害を及ぼすおそれが多い製品は「特定製品」として指定されていて、PSCマークなし無しでの販売は禁止されています。
自動二輪や原付のヘルメット(乗車用ヘルメット)は「特定製品」に指定されているので、PSCマーク無しで販売するのは「消費生活用製品安全法」違法です。
自治体が、特定製品の販売店や、取引事業者に、時々立ち入り検査をしてPSCマーク無しの製品が販売されていないか検査することになっています。
なお、購入や使用は「消費生活用製品安全法」違反にはなりません。
ヘルメット以外で「特定製品」に指定されている製品には、登山用ロープ、家庭用の圧力なべ・圧力がま、石油ストーブなどがあります。
DOT/FMVSS 218
DOT the U.S. Department of Transportation’s safety standard (FMVSS 218: Federal Motor Vehicle Safety Standard (FMVSS) No. 218,).
- (1) an impact attenuation test
- :an ambient condition; 16˚Cから26˚C
- a low temperature condition -15˚Cから-5˚C
- a high temperature condition 45˚C から 55˚C
- a water immersion condition. 20˚C から 30˚C
- (2) a penetration test;
- (3) a retention system test
- (4)Various labeling requirements.
DOT:The US Department of Transportation
NHTSA:National Highway Traffic Safety Administration
https://www.nhtsa.gov/road-safety/motorcycles
ECE22-05規格
主に欧州等で採用されている安全規格。
ECE22-05規格を通過したものはMOTO-GPやワールドスーパーバイク、鈴鹿8時間耐久をはじめとする世界耐久レースなどのFIM世界選手
権でも使用が認められている。
JIS規格にはない「縁石を想定した衝撃テスト」「顎への衝撃テスト」「より低い側頭部テスト位置への衝撃テスト」「紫外線照射テスト」などが義務付けされています。
http://www.unece.org/trans/main/wp29/wp29regs21-40.html
- 視界:左右各々105度づづ、合計210度、上7度、下45度
- 平面のアンビル落下試験と、縁石(kerbstone)落下試験は、秒速7.5m(高さ3.06メートルからの自由落下で秒速7.5mになる)からの落下
- フェースガード部分(Lower Facecover)の試験は、秒速5.5m(高さ1.54メートルからの自由落下で秒速5.5mになる)からの落下でを試験
- 最大275Gを超えない事。頭部損傷基準値HICが2400を超えないこと。
MFJ規格
(財)日本モーターサイクルスポーツ協会が制定した競技対応規格。
日本国内で行われるMFJ公認競技には、MFJ規格に合致し公認されたヘルメットのみ使用が可能。
公認を受けるには、車両検査協会でのJIS(2007年度版)の衝撃テストに加えてJIS(2007年度版)にはない旧JIS規格C種基準の3mからの耐貫通テストをクリアしたもの、もしくはスネル規格を満たしていることが条件とされています。
MFJ公認部品・用品一覧
http://www.mfj.or.jp/user/contents/motor_sports_info/authorized/kounin_buhin.html
2017年MFJ公認ヘルメット
http://www.mfj.or.jp/user/contents/motor_sports_info/authorized/pdf/2017/2017_helmet-kounin0501.pdf
BSI 6658 1985 (イギリス)
どん規格かわかりません。そのうち調べてみます。