CE規格は、プロテクターの性能を、体に伝わる衝撃が何kN(キロ・ニュートン、ニュートンの千倍)になるかで決めています。
kN で言われても安全性がよくわからないので、調べてみました。
プロテクター無しだと即死するレベルの衝撃を受けた場合
- バックックプロテクターLevel-1 で衝撃が緩和されて、18kNの衝撃を受けると、重症になる確率が70%、中傷になる確率は100%
- バックックプロテクターLevel-2 で衝撃が緩和されて、 9kNの衝撃を受けると、重傷になる確率は10%、中傷になる確率が20%
という結論になりました。
怪我の分類
怪我のレベルの分類には、アメリカ医師会が作成した外傷の種類と解剖学的重症度の指標AIS (Abbreviated Injury Scale) があります。
AISは、交通外傷患者の解剖学的重症度評価指標として作成された指標ですが、災害現場で被災者の重症度と治療の緊急度の判断(トリアージ)に使われることもあるため、比較的有名な指標です。
AISは、軽傷から即死まで、6つのレベルに怪我を分類します。
- AIS 1 軽傷
- AIS 2 中傷
- AIS 3 重症
- AIS 4 重篤
- AIS 5 ひん死
- AIS 6 即死 (処置不能)
衝撃と怪我のレベル
このAIS 2ないしAIS 3以上の怪我を負うリスク(可能性)と、大腿部に軸方向の荷重(衝撃力)の関係のグラフが下のグラフです。
大腿部軸方向の衝撃をCEのバックプロテク―でカバーすることはできませんのでの、このグラフでバックプロテクターの性能を語るのは、デタラメです。
とはいえ、何 kN でどの程度の怪我を負うリスクが、何パーセントくらいあるのか、だいたいの傾向はわかるのではないかと思います。
その他の、衝撃と怪我のレベルに関する情報を並べてみます。
- 2.5 kNの衝撃 は大腿骨骨折の危険が生じるレベルの衝撃
- 3 kNの衝撃 は、鼻が確実に折れ衝撃
- 4.6 kNの衝撃は、椎体(脊椎の個々の骨のこと。頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個、仙椎5個、尾椎4個の33個ある)の骨折が生じる閾値
- 5 kNから6 kNの衝撃は、四輪が50㎞で衝突してフ ロントガラスに頭をぶつけ、前頭骨が骨折する程度の衝撃
- 10 kNの衝撃を腹部に受けると内臓破裂や骨折等の重大な損傷を受ける可能性があるレベルの衝撃
(そのため、安全帯の耐衝撃性基準は、8kNになっています。右の図は、安全帯等で墜落衝撃荷重を全身に分散できる条件で、落下荷重と怪我の関係です。) - 17 kNの衝撃は、50cmの高さから鉄板の上に転倒した時、頭に受ける衝撃
- 19 kNの衝撃は、頭にうけると人間が死ぬレベルの衝撃
- 100 kNの衝撃は、体重50kgの人間が高さ20cmから転落して頭から衝突した場合に受けるレベルの衝撃(200G×50kg×9.8÷1000)
衝突する場所にもよりますが、10 kN以上の衝撃は危なそうです。
プロテクターのCE規格が定めている衝撃試験の基準値は以下のとおりです。
LEVEL 1 | LEVEL 2 | |
---|---|---|
EN 1621-1:2012 (プロテクター全般) |
平均35 kN以下 最大でも50 kN |
平均20 kN 以下 最大でも30 kN |
EN 1621-2 (バックプロテクター) |
平均18 kN 以下 最大でも24 kN |
平均 9 kN 以下 最大でも12 kN |
EN 1621-3 (胸部プロテクター) |
平均30 kN 以下 最大でも45 kN |
平均 20 kN以下 最大で 35 kN |
EN 1621-4 (エアバック) |
平均 4 kN以下 最大でも6 kN |
平均 2.5 kN以下 最大でも3 kN |
AISと衝撃力の関係を見ると、CE規格Level 1 は気休め、Level 2でもギリギリ合格のプロテクターだとあまり安心できない気がしてきます。
Level 2を余裕でクリアして4 kN以下にするプロテクターも市販されているので、CE Levle-2 合格!で安心せず、合格した点数が何 kNなのかを確認したほうが良さそうです。
CE 規格では、試験結果の数値を記載するように定めています。
表記されている数字が1桁前半でないと、ちょっと不安になってしまします。
CE Level1のプロテクタ(EN 1621-1 Level 1)は、平均35 kN/最大50 kNの衝撃を許容しています。
35 kNは/最大50 kNは、3.5トンから5トンの重さです。これは、大人の象の体重なみです。
ほんの一瞬ですが、象に踏まれたのと同じレベルの衝撃を受けたら、無事では済みそうもありません.。
EN 1621-1 Level 1でも基準値35kNを余裕でクリアして、15kNにしてくれる製品もあります。
CE規格の試験で実施する50ジュールの衝撃は、時速50㎞で電柱に衝突しても発生しうる衝撃です。街乗りしかしない場合でも、ちゃんとプロテクター装着したほうがよさそうです。
なお、何 kNでどの程度人体への影響があるかは、研究によってさまざまで、数値もさまざまです。
研究方法も、死体を使った研究、ダミーで測定した実験、事故などから内臓の障害状況を調査した研究、コンピュータシュミレーションなど様々です。
だいたいこんな感じだと理解するしかないようです。