過酷なトラック

走っているとトラックが怖いと思うことが、時々あります。

調べてみると、トラックドライバーは、過酷な労働条件で頑張っている人たちのようです。

トラックドライバーの労働条件

長時間労働

労働基準(「自動車運転者の労働時間等の 改善のための基準」)は1日最長16時間の仕事を、月293時間までやって良いことになっています

しかし、この基準を守っていたら、荷主が求めている時間に間に合わない状況が続いているそうです。

「自動車運転者の労働時間等の 改善のための基準」

  • 1日の拘束時間は原則13時間以内、延長する場合であっても16時間が限度
  • 1箇月の拘束時間は原則として293時間が限度(13時間X22.5日が限度)
  • 1年間の拘束時間は3516時間(293時間×12箇月)が限度
  • 4時間運転すれば30分以上の休憩を取る
  • 1日の休息期間は継続8時間以上

この基準で、1箇月の拘束時間の上限として規定されている293時間は、100時間の残業をして到達できる数字です。
週44時間労働(平日8時間×5日+土曜4時間)の仕事だと、月間労働時間190時間弱です。

100時間の残業を12カ月続けても良いという基準は、基準そのものが過酷です

しかも、1日の休息期間は継続8時間以上ということは、休息が8時間あればいいわけで、この8時間で食事、お風呂、睡眠時間、通勤時間などに使うことになります。
連続運転4時間もOKというのも過酷です。

この過酷な基準も守れないほどの長時間労働に耐えられる人は、タフです。

罰則はない

「自動車運転者の労働時間等の 改善のための基準」は、法律のように罰則はありません。
違反していれば、労基署から是正が指導されるだけです。

人手不足

全国のトラックドライバー数は80万人前後。国交省調査では、事業所の68.8%が運転手不足。

人手不足が、長時間労働の一因のようです。

佐川急便では、人手不足で配達が遅れが発生しています。
佐川急便のホームページに「重要なお知らせ:年末の荷物量の増加による集配遅延について. お客さま各位. いつも佐川急便をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。 年末の荷物量の増加に伴い、全国的に集荷・配達の遅延が見込まれます。 」がありました(今は削除されています)。

2015年は、トラックドライバー88万人超の需要に対し、供給が74万2000人にとどまり、14万人が不足で、必要数の85%に満たなかったようです

人手不足→ 長時間労働 → 応募者減少→人手不足 という悪循環に陥っています。

年収

トラックドライバーの平均年収は、1997年がピークで510万円だったが、2015年は437万円に低下。
全産業の平均より50万~60万円低くなっています。

年収が低いことも、人手不足の一因です。

過当競争 → 料金値下げ → 給与低下が、応募者減少(人手不足)を招いています。

年収低下の背景

トラック運送業界は1990年の規制緩和で新規参入が進み、事業者が急増し、過当競争が続いています。

物流業の多くは中小企業であり、荷主企業に大きく依存しているため、運賃の値下げ競争が進んだ結果、トラックドライバーの平均年収が下がっています。

人出不足対策

若手投入

18歳から取得できる「準中型免許」が2017年3月から取得できるようになります。

高校卒業して直ぐにトラックを運転できるようにして、主に高卒者の確保につなげるための新免許制度です。

いままでは、中型免許の取得には「普通免許の取得(18歳以上)から2年を経過」という条件があるので、20歳以上でした。

この過酷な状況に、18歳から20歳の人を投入するのは、戦死者続出で兵員不足になった軍隊が少年兵を募集するような状況だと感じます。

中型免許が20歳からしか取得できないことが人出不足の原因ではありません。

トラック大型化

トラックの全長規制を「最大25メートル」に緩和し、荷台を連結して一度に運べる荷物を増やせるように法改正する計画もあるそうです。

2015年にフルトレーラーの最大長は、17メートルから18メートル、特例で21メートルに延長されています。それをさらに延長する計画です。

  • フルトレーラ連結車:18m以下(特例で21メートル以下)
  • セミトレーラ連結車:16.5m以下
  • 大型トラック:12メートル以下

25メートルだと10トン車2台分の荷物が積めるそうです。

大型化でドライバーの負担は増加

車両が大きくなれば、トラックドライバーの負担は増えます。

全長12メートルの10トン車と、25メートルのトラックを運転するのと、どちらが負担が少ないかは、深く考えなくもわかります。

25メートルもあると、運転が大変なだけでなく、停車して休憩する場所を見つけることも、困難になります。

一度に運ぶ荷物が増えれば、積み下ろし時間も長くなります。

追い越し

バイクで走っている時に25メートルのトラックに遭遇したくないですが、トラックドライバーもバイクに周囲をウロチョロされたくないと思われます。

追い越して先に行く場合、25メートル車を、速度差20㎞/hで追い抜くとすると、横を通過する時間が4.5秒です。

5m後ろから追い越し始めて、10m前に出るまでには、7.2秒です

速度差40㎞/hなら3.6秒です。120㎞/hで追い越すなら、3.6秒で120メートル走ることになります。