2017年04月18日に正式発表されたCBR250RRは、HONDAの二輪では初のスロットル・バイ・ワイヤを搭載しています。
メカニカル・ワイヤを使わないスロットル・バイ・ワイヤです。
スロットル・バイ・ワイヤ
スロットル・バイ・ワイヤ(Throttle-By-Wire)の、ワイヤは電線をさします。
電線によるスロットル制御です。
機械的に引っ張るケーブルを使うダブルワイヤ、シングルワイヤーなのどのメカニカル方式とは、まったく異なります。
CB250RRのスロットル・バイ・ワイヤ
CB250RRのスロットル・バイ・ワイヤでは、APSがグリップ側にあります。
機械的な制御をするワイヤケーブルを一切使わず、電線でスロットル開閉するシステムです。
CBR250RRのアクセルグリップに内臓されたアクセル・ポジション・センサー(APS)が、アクセルグリップの開き具合(グリップの回転角度)を検出します。
検出したグリップの回転度合(回転角度)を、電気信号して、エンジンコントロールユニット(ECU)に電線で送ります。
ECUが、スロットルボディのバルブ開度をスロットル制御モーターに指示し、モーターがスロットルバルブを開閉します。
ヤマハのスロットル・バイ・ワイヤ YCC-T
YAMAHAの YZF-R6 もYCC-Tというスロットル・バイ・ワイヤを10年前に搭載しています。
YCC-Tでは、アクセル・ポジション・センサー(APS)がECU側にあり、メカニカルワイヤが残っています(下図)。
YAHAMAは、アクセルグリップとAPSを機械式 ワイヤーで接続し、かつ、アクセル開度センサー部 の軸受けにフリクションを作り出すだけのための特 別なオイルシールを追加し、従来のメカニカル方式と変 わらないアクセルの操作フィーリングを確保しています。
メカニカルワイヤーがなくなり、ケーブルを引っ張る抵抗が無くなると、グリップ回した時のフィーリングに違和感が生じてしまうそうです。
YAMAHAは機械ケーブルをあえて残して、違和感解消していますが、HONDAがどうやって解消したのか、していないのかは不明です。
ケーブル全廃で左右均等なアクセルワーク
機械式のケーブルを使っている普通のバイクは、ハンドルを右に切った時に、アクセルの遊びが小さくなり、左に切るとアクセルの遊びが大きくなります。
停止している状態でハンドルを切ってみると、アクセルの遊びが左右で違うことを確認することができます。
左右で遊びが違うので、左旋回も右旋回も同じ感覚でアクセルを開けると、左旋回の後の加速(アクセル・オン)が、右旋回のアクセル・オンより若干遅れます。
アクセルを開ける前に、遊びをとってから開ける人は問題ありませんが、遊びをとらずにアクセルを開ける人は、左右でフィーリングが変わります。
完全に機械ケーブルを無くして、CBR250RRのスロットル・バイ・ワイヤだと左右の違いがありません。
設計者のメリット
スロットル・バイ・ワイヤは、設計上のメリットも多々あります。
- 短い吸気管長と大口径ボアによりエンジンの高回転・高出力化が容易
- 出力特性作り込みの自由度が高くなる
- アイドル制御用のアクチュエーターなどの周辺機器を削除可能
(YCC-Tでは、始動時の空気量制御やアイドル時のエンジン回転速度制御を、メイ ンスロットルバルブで行うことにより、始動時の空気量制御のためのデバイスが削除しています。これで、スロットルボディが1㎏以上軽量化できたそうです)。
スロットル・バイ・ワイヤがレアな理由
「スロットル・バイ・ワイヤ」は、「フライ・バイ・ワイヤ」、とも「電子制御スロットル」とも呼ばれていて、四輪車では普及していますが、二輪ではレアです。
二輪でレアな理由
- メカニカルワイヤーがなくなり、ケーブルを引っ張る抵抗が無くなるので、工夫しないとグリップ回した時のフィーリングに違和感が生じてしまう。
- 四輪用より、制御高速化(100分の1秒より短い間隔で制御)しないとレスポンスが悪いと感じられてします。
(YCC-Tでは、APSの角度検出は1秒間に1,000回) - 回転角度検出の精度を向上させないと、アクセル操作に違和感が生じる
- スロットル制御装置が故障した際の吸気量制御を二輪用の特性に合わせる必要がある
- 四輪用より、小型慶力しつつ、スロットルバルブ回動のためのアクチュエーターの耐振性向上が必要
手の平で感じるアクセル操作のほうが、靴底で感じるアクセル操作より敏感ですし、アクセルの開閉に対する車体の挙動変化も二輪のほうが敏感でなので、二輪のスロットル・バイ・ワイヤは四輪より繊細にならざるを得ないのだろうと思われます。